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差別を無くそうと呼びかける広告である。呼びかけられる対象はミネソタ州の住民。キャッチは個別的かつ意味深長、ビジュアルは具体的かつ現実的。日本の自治体がこの手の広告をやると、『差別をなくそう』が、そのままキャッチになり、そこに青空に白い雲と言った抽象的なビジュアルをもってきたりしがちなのでは?まぁ、日本ではそれも致し方ない。差別は、基本的にもっとも『インサイト』が許されにくいテーマだろうから。

黒人差別、女性差別、同性愛者差別。日本と違ってコチラの場合、それぞれに差別される側にしっかりインサイトしリアルな問題・・・黒人への憎悪、働く女性へのセクハラ。同性愛とエイズへの偏見・・・をあぶり出し、表現では『人間を描く』というカンヌ的鉄則が貫かれる。そして押さえのコピーで(そしてこんな差別がまかり通るほど)ミネソタは冷たいところなのかい?と結ぶ。“COLD PLACE”というのはダブルネーミングだ。ミネソタと言う地は湖からの身も凍るような風が吹き付けるアメリカでも名だたる寒冷地。気候と同じように人々の気持ちも冷え冷えとしているのか・・・と言うニュアンスを伝える。だが、これはミネソタ州政府の政府広報ではない。アメリカの広告にしては珍しく発信主体がわかりにくいが、他にクライアントは存在する。広告の一番下の部分、クレジットと見紛うばかりの小さな等級で、この差別を無くそうと言うメッセージが“MCC All God's Children”によるものであることが記されている。“MCC”とは、ミネアポリスに本拠地を置くキリスト教系の協会組織だ。

もともとミネソタは冷たい風だけでなく、リベラルな風を運んでくれる州としても名高い。たとえばアメリカ発の女性副大統領候補を擁立する動きはここから生まれた。欧米の新しい潮流となった中道左派の政治家たちに少なからぬ影響を与えたボブディランもミネソタの出身だ。『風に吹かれて』は、ミネソタの冷たい風とリベラルの風のダブルネーミングだったのかもしれない。控えめな広告主“MCC-”も冷たい風とのダブルネーミングでリベラルの風を運ぼうとしている。

一般にキリスト教的倫理観と言うものは同性愛には寛容とはいえない。男性と女性の役割の違いを自明のものとする傾向もあるかもしれない。キリスト教を後ろ盾に隠然と黒人差別を続けるもの達もいる。もちろん一口に協会といっても主義主張はさまざまだが“MCC-”は『我々は異性愛も肯定する』とわざわざ断りを入れるほど同性愛に寛容である。むしろ同性愛的寛容さをベースにPC(ポリティカル・コレクトネス=政治的に何が正しいか)を訴える。カトリックもプロテスタントもカルトと認めるとか、一つの完璧な道は存在しないとか、その主張はいたって――“COLD”ではない――“COOL”なものだ。
(広告9+10 1999博報堂)
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