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先代幸四郎(7代目?)が或る人に、
『あなたはいつ童貞を失いましたか?』
と、訊かれたところ、
『いやァ、どうも、わたしなんぞは、人様に比べて、まことに晩稲で、どうもお恥ずかしくて』
となかなか答えません。
『遅くてもいいから、いつごろですか?』
ときいても、
『いやァ、あんまりおそいから』
と答えをしぶり、とうとう問い詰められて、頭をかきながら、恥ずかしそうに、
『いや、実は十三のときです』
と答えたそうです。まことに天晴れなものですが、実際その頃の歌舞伎役者は、年上の女性に可愛がられて、もっと早く童貞を失うことが多かったらしい。いまどきのハイティーンがいくら威張っても、これには敵いません。

川端康成の小説に、童貞を重荷に感じる少年が、月に向かって『僕の童貞をあげよう』と叫ぶ美しい場面があるが、こんな厄介なそして持ち重りのする荷物は、一刻も早く捨てるに越したことはないのです。

ときどき、ティーンエイジャー雑誌の身の上相談欄に、『童貞を奪われて』などと題して、相手の女を魔女呼ばわりしてるようなのがあるが、とんでもない間違った話で、そういう女は実は菩薩なのです。

(中略)

そもそも男の人生にとって大きな悲劇は、女性というものを誤解することである。童貞を早く捨てれば捨てるほど、女性というものに対する誤解から、それだけ早く目覚めることが出来る。男にとってはこれが人生観の確立の第一歩であって、これをなおざりにして作られた人生観は、後年まで大きなゆがみを残すのであります。

(後略)

『不道徳教育講座』三島由紀夫 昭和42年11月初版


小説や戯曲では格調高い文句を繫げる名手なんだが、エッセイになると自由闊達というか豪放磊落な感じで思想家の文章になるんだろうか?それにしても時代が随分と経過したようで、童貞を捨てる年齢もこのエッセイでは驚嘆されてるけど今では違うんじゃない?
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