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ジャーナリストの高木一臣さん。現在、アルゼンチンで邦字新聞『らぷらた報知』の編集長をされている方ですが、昭和二十六年、大学を卒業して二十六歳でアルゼンチンに渡ったときは、スペイン語がうまくしゃべれませんでした。
 
当時、無一文だった高木さんは、無料の国立夜間小学校に通うことにしました。 その学校での歴史の授業のときでした。歴史の先生は「○○、前に出ろ」と生徒を指名して教壇に呼び出して、復習してきたかどうかを確認します。

 高木さんも呼ばれました。ところが、高木さんのときには、こういいました。

「『日出づる国』の生徒よ! 前に出ろ」
 高木さんはいいました。
「先生、『日出づる国の生徒よ』という呼び方はやめてください」
「なぜだ?」

「先生、太陽は落ちたんです。日本はもう『日出づる国』でなくなったんです」
「君が『太陽は落ちた』というのは、日本が戦争に負けたからなのか」
「そうです」

「君は間違っている! 日本が『日出づる国』であるのは、戦争に強かったからではない。
 日本はアジアで最初に西洋文明を採り入れて、わがものとし、世界五大強国の仲間入りをした。
 『西洋文明』と『東洋文明』という全く異質の文明を統一して、一つの世界文明を創り上げる能力をもった唯一の国だ。この難事業をやり遂げたのは、日本をおいて他にない。
日本がこの能力をもち続ける限り、日本は『日出づる国』であるのだ。
戦争の勝ち負けなどという問題は『西洋文明』と『東洋文明』の統一という大事業の前には、 取るに足りないことだ。君は日本が戦争に負けたからといって、卑屈になる必要はゴウもない。
俺は『日出づる国』の人間なのだという誇りと精神を失わず、胸を張って歩きたまえ」

異国の先生から、こんな言葉を聞こうとは――。
高木さんは、このとき溢れる涙を抑えきれなかったそうです。
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